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①粋曜喫茶室編集『江戸文化カフェ』発行

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 小川軽舟著『俳句日記2014 掌をかざす」(フランス堂発行)を拝読。
 本書は俳句結社「鷹」を主宰しておる、氏の句日記である。一ページに短い詞書き(日記)と一句が記されている。日常の出来事を淡々と描き、俳句を載せる。俳句は日常を活写するのが生命線でもある。仕事のこと、家族のこと、趣味のことなどを一年を通して毎日ふらんす堂のホームページにアップした。
 俳句せぬ妻の生き方柿若葉
 若き日は我にもありき竹の秋
 母の日の父との電話母のこと
 新茶汲む一人暮らしの急須かな

 日記はプライベートのこと。そのほんの一齣を俳句に詠む。俳句はある意味では読者に介入できぬ世界。しかしながら、読者はその一句に共感したり、勝手にイメージを広げられる。俳句鑑賞のだいご味は、作者だけのもつ世界を超えて読者自身の読みの世界に転嫁することが可能なのだ。
 小川氏とはまったく面識もないが年齢が近いせいか、句が我がことのように感ぜられる。最近読んだ句集のなかで、本書はもっとも共感を得た句集である。


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 梅雨の晴れ間に、三原由起子さんから第一歌集『ふるさとは赤』が届いた。ブックジャケットは目が覚める美しい水色。
 帯には彼女の師であろう、永田典子氏の短い文章が目を引く

  iPad片手に震度を探る人の肩越しに見るふるさとは 赤

 震災で喪ったふるさと浪江への思い、
 原発汚染への怒りと疑問などなど、歌人とミュージシャン、
 ふたつの顔を持つ作者の律動感溢れる第一歌集。
 けれん味のない直截な文体が魅力――永田典子

 跋文によれば、『ふるさとは赤』は三原さんの十六歳から三十三歳までの歌をまとめたとある。小生は一度だけ三原さんにお会いしたことがある。その時知ったのことは、三原さんは、『うた新聞』編集長の玉城入野氏の細君ということ。だがミュージシャンとは知らなかった。おそらく声量豊かなヴォーカルだろう。ロック歌手かシャンソン歌手か、それとも演歌歌手か。和歌はそもそも朗詠であるからにして、活字面で訴えるものではない。小生は若い時(そんな時もあったが)に詩の朗読会に足繁く通ったものだ。きっと三原さんの朗読によるそれらの歌を聞くとまた違った感じを受けるだろう。
 さっそく『ふるさとは赤』を繙く。みずみずしい歌がある。
 目を引くのは恋の歌群である。恋歌は記紀歌謡、『万葉集』さらに勅撰集へと詠み継がれた。『古今和歌集』では1111首の歌が収められ、恋歌では恋の成り行きを時系列に配置され、その数は360首にのぼる。その数を百分率に示すと32%になる。歌われた恋とは。『宗祇初心抄』に「恋の本意と申は、訪はれぬを恨み、別るるをしたひ、待暮にをそきをかなしみ、……」と詠むことが慣わしであったようである。それはともかく、三原さんの恋歌をみてみよう。
  
   数学の時間は君が眠るから私もいっしょに眠ってしまおう

 初恋の歌だろう。好きな人と同じく「眠る」ことを共有することにより、芽生えた恋心が増幅してゆく。が、とかくこの手の恋は成就せぬもの。つまり初恋は実らないとは、このことか。

  嫌だった短い睫毛が粉雪を受け止めるような君との出会い

 この歌はセカンド・ラブか。昔、たしかそのような歌があった気がするが、「恋も二度目なら……」ごとき、「短い睫毛」がしっかりキャッチしたのは、いうまでもなく大人の恋であるが、ただ哀しいことに、このような恋も成就はしない(反論のあるかたはご一報を)。


  むなしさを持つ同士抱き合えば答えは見えてくるかもしれない


 この歌になると、人生の機微が感じられ、しぜんと「答えは見えてくる」もの。その答えとは、もちろん読者に委ねられている。小生は恋については門外漢であるが、「かもしれない」と余韻を残すところに、読者をはぐらかす。これも恋のテクニックか。だとすれば三原さんは頗る恋に精通したテクニシャン。
 伝統的な恋歌に対し、独自の世界を惜しみなく詠む三原さん。そんな彼女の影なる部分がある。なんとも言えぬ寂寥感。
 
  三十路まで二年と少しを数えれば死期が近づいているような恐怖

 とかく二十代のころは夭折願望がある。が、ひたひたと「死期が近づ」くことに対し、「恐怖」と感じ取ったところに実感がこもり、彼女の内なる彼女が浮き彫りにされる。青春の秀歌である。

 後半は忘れもしない東日本大震災のこと。こちらはあえてコメントは控える。一言だけ申せば、歌人としての三原さんを逞しくさせた震災でもあった。さらにもう一言申せば、震災歌群から読者が何を思い、日本の未来に何を期待すべきかを考えなければなるまい。ついでにもう一言申せば、三原さんは震災歌をこれからも詠い続ける決意が伝わってくる。

  阿武隈の山並み、青田が灰色に霞む妄想 爆発ののち

  「十年後も生きる」と誓いし同窓会その二ヶ月後にふるさとは無し

  ふるさとを失いつつあるわれが今歌わなければ誰が歌うのか


 第一歌集は爽やか風となり、短歌界に新風を吹かせた。三原さんの少女から女性へと成長してゆく姿を、恋歌として歌われている。東日本大震災を契機に歌風の変化が認められ、今後の作風におおいに影響をあたえるだろう。第二歌集を心待ちにしているのは、小生だけではない。
 現代女流歌人の新たなる門出に祝福を!! 今宵の酒は祝い酒、もちろん肴は『ふるさとは赤』である。


『ふるさとは赤』
本阿弥書店2013年5月20日初版 本体1,500円(税別)

              祝「うた新聞」創刊


 あたかもそれを祝福するように、まんめんの笑みを浮かべた桜が咲きひらいた。うららかな陽気に誘われて、ついうとうととしているさなかに「うた新聞」が届いた。
 4月にあらたに月刊の短歌総合新聞が創刊された。編集兼発行人は「いりの舎」の玉城入野氏である。長年、短歌新聞社で編集者として第一線で活躍されて、旧蠟に詩歌専門の出版社「いりの舎」を立ち上げ、すでに歌集『青白き光』を刊行され、話題となっていることは、周知のとおりである。 実力派の編集者である。
 記念すべき「うた新聞」の創刊号を飾る、1ページ目には「今月の巻頭作家」の欄に、短歌界を牽引する馬場あき子さんと清水房雄さんの作品がそれぞれ15首が、据えられている。
 余談だが、馬場さんは小生が蟄居する柿生に住まっておられ(同じ町内で)、短歌の他に能にも造詣が深い。いつしか国立能楽堂で、西野先生が書かれた新作能「草枕」が演じられるまえに、馬場さんとの対談があった事を思い出す。一言ひとことに重みと鋭さあった。馬場さんの歌には、ゆったりとした謡曲の調べに似たリズムが感じられる。

 「天も花に酔へりや」といふ小謡に下級藩士は野にて酔ひたり

 江戸時代では、謡は武士の必須の教養であった。参勤交代で、地方から集まった武士たちは、それぞれのお国訛があったが、謡の文句は彼らにとって共通の言語であったであろう。江戸城の近くにある武家屋敷では、謡の文句が日常語のごとく耳にしていたであろう。
 この歌は麗らかな春の気分に満ち、朗々と「天の花に酔へりや」と謡う。
 江戸時代では、謡曲の文句を裁ち入れた俳句が多く詠まれた。とりわけ岩城藩の大名、内藤風虎は。風虎の屋敷は溜池にあり、そこは文学サロンとして開放された。知的空間として多くの俳人を輩出した。その中には松尾芭蕉もいた。俳諧は坐の文学と言われ、さまざまな人との交流が行われていた。
 今年の冬は例年になく寒く、桜が咲くのを待ち侘びていた。こうして咲き誇る桜日和に「うた新聞」が創刊された。 本紙も交流の場であることに代わりがない。
 「うた新聞」の内容をごく簡単に紹介しよう。
 1ページ目「今月の巻頭作家」「巻頭評論」
 2ページ目「添削授業」「作品時評」
 3ページ目「今月のうたびと」「歌壇時評」
 4ページ目「在郷歌人の肖像」
 5ページ目「作品集」
 6ページ目「書評」
 7ページ目「トピック・案内」
 8ページ目「各地リポート」
 本紙はパブロイド版8ページでありながら、読みごたえのある、充実した内容である。編集後記の一節を引こう。

 小紙は、短歌を文学として捉えるとともに、各地方の短歌作者の交流の場にしていきたいと考えております。

 中央と地方の短歌作者の交流が大切である。また、歌人らは結社だけに留まらずに、結社間の交流が積極的に行われるべきである。本紙の使命はそこにある。もちろん、短歌のみならず、俳句作者との交流も期待したい。
 そして高校や大学で短歌を作っておられる若者も本紙に登場して、短詩形文芸に新風を送ってほしい。
 「うた新聞」がこれから発展しすることは、短歌や俳句を嗜む人が増えて、活気づくことを意味する。願ってやまない。


<購読方法>
年間定期購読は送料・税込で4,800円です。
電話 03-6413-8426
FAX  03-6413-8526
までお申込みください。


うた250
 歌集『青白き光』は、短歌新聞社から平成16年に刊行され、平成23年12月にいりの舎から文庫版として復刊された。白を基調にした清楚なシンプルなカヴァーで、しかも知的さに満ちた造本である。
 著者の佐藤祐禎氏は、福島県双葉郡に生まれ、農業に従事する傍ら、短歌を詠んでおられ、本書は佐藤氏の第一歌集である。ひもとけば、反原発をモチーフに多くの秀歌を残されている。のみならず、家族を詠んだ歌も見逃せない。
  この部屋に命終らせたしと言ふ痩せ衰へし母を見て父は
  婚約のダイヤ嵌めたる娘のゆびを見てゐし眼が急にかすみぬ
  辞めてなほ折々は生徒に言ふごとくわれに対する妻を咎めず
 反原発、農業政策を詠むその底流には、社会批判がなされ、その一方で家族を思う歌には、いつも優しい眼差しが注がれている。
 東日本大震災からまもなく一年が経とうとしている。昨年3月に起きた原発事故以前から、
  農などは継がずともよし原発事故続くこの町去れと子に言ふ
佐藤氏は警鐘を鳴らし続けていた。いつ起こるか解らぬ大惨事。代々継いできた農地を見捨てて、故郷を去れ、と我が子に訴える気持ちの裏には、大なり小なり、頻繁に原発事故が起きている事実を見据えているからに他ならぬ。東電は、事故が起きる度ごとに、仮縫いの対処をしたにすぎぬ。昨年縫い目が綻び、一気に張り裂けたのである。
  線量計持たず管理区に入りしと言ふ友は病名なきままに逝く
  質問の答へは核心に触れぬまま原発健全性の説明会閉づ
 目に見えぬ放射能との闘い、不安に怯える住民の肉声、東電に対する憤りが三十一文字に凝縮されている。先頃のニュースで、東電社長の電気料金値上げ申請の記者会見を報じていたが、全く説得力のない内容である。『青白き光』を読んでみたまえ。原発を推進した政治家たちよ。
 たしかに原発を誘致することによって、雇用が生まれ、地元に多額のお金がばら撒かれ、いっけん豊かな町と化した。経済的な恩恵を住民の命と引き換えに。おそらくそこに住まっておられる人は、誰でも知っていたに違いないだろう。口に出すことに憚っていたからであるが、佐藤氏はあえて歌に詠んだ。歌には事実を詠むだけでなく、未来をも予言する力が秘められていることを、再認識させられた。まず言葉があり事象がついてくるのだ。
 マスコミすら報道しなかったそれを、本書を一読すれば、原発の恐ろしさが明らかにされ、背筋が寒くなり、憤りを覚えずにはいられない。東日本大震災直後に起きた原発事故。それを「想定外」と言うが、住民らにとっては「想定内」なのだ。必然的に起きた事故である。寡黙に生きるしたたかな住民の気持ちを、電気を浪費している都会に住む人が知る由もない。皮肉にも福島原発で発電される電力は、都会人のためにあるのだ。
  断層帯に火発原発犇き合ひチェルノブイリのよそごとならず
 そしていつかチェルノブイリ事故の二のまえにならぬか、と佐藤氏の叫び声は、杞憂ではなかった。原発事故は起こるべきして起きた、人災であることが改めて実感した。
  わが町は稲あり魚あり果樹多し雪はふらねどああ原発がある
 今日は二十四節気の雨水である。雪が雨に変わる頃。今年の冬は厳しい寒さと積雪に、日本列島は今も震えている。原発のある福島も雪に閉ざされていることだろう。今日も原発にも雪が降り続いていることだろう。今年の春は遠い。やがて福島にも春はやってくるだろう。そしてなにもなかったように梅が咲き、桜が咲くだろう。故郷を追われて異郷に避難を余儀なくされた人々の心に春が訪れるのは、数十年もの先のことであろう。その日が来るまで私たちは見届けよう。春の麗らかな陽光が降り注がれた福島のとある町に。いまも福島は雪が降り積もっているが、やがて雪が融けるだろう。地元の人々の心にも。

 原発事故を契機に『青白き光』を復刊した、いりの舎の玉城入野さんの反原発への思いのつよさが、伝わってくる。玉城さんは福島復興支援をなさっておられると訊く。小生と玉城さんとは、面識はないが、玉城さんが出版起業をし、昨年末に『青白き光』を刊行し、この春に「うた新聞」創刊を進めていることにシンパシーを覚えずにはいられない。『青白き光』を是々非々とも読んで戴きたいと希ばかりである。 (雨水の夕刻 拝)
『青白き光』税込700円+送料
注文先
〒155-0032
東京都世田谷区代沢5-32-5シェルボ下北沢403
℡03-6413-8426 Fax03-6413-8526

 2月2日の東京新聞(夕刊)に載せられた「頑張る「一人出版社」」という記事は、あたかも早春のこそばゆいばかりの陽光のようである。小生は、目を細めながら、心温かな思いを感じつつ、それを何度も読んだ。
 菊谷倫彦さんが「菊谷文庫」を、山本和之さんが「パブリック・ブレイン」を、玉城入野さんが「いりの舎」を立ち上げた。出版不況のなか青雲の志を抱いて、30代、40代の若者が出版起業をしたことは、同業者としてとても勇気づけられた。と、ともに斜陽産業と言われて久しい出版界に、彼らは、きっと新風を巻き起こすことを確信した。
 「いりの舎」の玉城さんは、短歌新聞社で編集者として活躍され、昨年起業して刊行第一弾として、佐藤佑禎さんの歌集『青白き光』を文庫版で復刊した。それは反原発を詠んだ歌集で、じつにタイムリーである。小生はさっそく注文したが、手元に届くのが待ち遠しい。近いうちに読後感をこのブログで紹介しよう。
 玉城さんから「短歌総合紙・月刊「うた新聞」創刊のお知らせ」が、メール添付されていた。その内容を一部抜粋する。

 さて、この度、いりの舎では、新しい短歌総合紙・月刊「うた新聞」(編集発行人・玉城入野)を創刊いたします。現在、今年4月に第1号を発行すべく準備作業を進めております。
 短歌新聞社では、8年余にわたり「短歌新聞」「短歌現代」の編集に携わってまいりました。今後は、これまでのささやかな経験を、「うた新聞」の編集発行に活かしていきたいと存じます。どうか、従前同様のご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。
「うた新聞」は、短歌の伝統を大切に継承しながら、広い視野で現在の新たな動向にも注目し、歌歴を重ねた作者から初学の方までを含めた短歌愛好家の皆様にご満足いただける紙面作りを心がけてまいります。
 内容としましては、作品欄、実作入門、評論連載、地方の先進歌人紹介、新刊書評、歌壇ニュース、読者歌壇、各地リポート等、現代短歌の〈いま〉をお伝えしていきます。創刊は4月10日頃を予定しております。
また、「うた新聞」では、歌壇の動向を全国にお伝えするべく、出版された歌集・歌書や、結社の活動、短歌関係の行事などを報道してまいりますので、随時、情報の提供をお待ちしております(編集の都合により、掲載できない場合もございますので、予めご了承ください)。
 つきましては、「うた新聞」をぜひご購読いただきたく、ご本人様はもとより、ご友人・知人の方々も、ご購読をおすすめくださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。
なお、ご購読のお申し込みは、お名前(結社名)、ご住所(郵便番号)、お電話番号、自選一首(新旧不問/掲載料・原稿料は生じません。記入自由)を、このアドレスにご返信ください。創刊号を発行次第、振替用紙を同封してお送りいたします。合わせて、ご友人・知人の方でご購読いただける方のご送付先も上と同じくお書きください。必要な方には、申込用紙を郵送、ファックスにてお送りいたしますので、遠慮なくお申し付けください。
謹白                         
平成24年1月吉日

短歌総合紙・月刊「うた新聞」(8頁) 
いりの舎(代表・玉城入野)
月刊(年12回発行)毎月10日発行 
〒155-0032 東京都世田谷区代沢 5-32-5シェルボ下北沢403
電話(03)6413-8426
FAX(03)6413-8526
年間購読料 4800円(税送料込み)        
発行部数  5000部(予定)           
                             
E-mail info@irinosha.com

 小生のブログを読んで戴いている読書子のなかで、短歌に興味を持っておられる方がおられれば、是非とも「うた新聞」の購読者になって戴くよう奨めてもらいたい。そして多くの方に宣伝してほしい。若き編集者を支援しつつ、あたたかいまなざしで見守っていこうではないか。出版界を活性化していけば、もっと文学が元気になるだろう。お互い文学というジャンルである。文芸と学術との差異はあるものの、小生も老体に鞭を打って、本づくりに励みたいと思っているので、獺祭堂もよろしくお願いしたい。             (いりの舎宣伝部)
    

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