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深沢眞二/深沢了子編『芭蕉・蕪村春夏秋冬を詠む』春夏編・秋冬編


 本書は「春夏編」と「秋冬編」の全二冊からなる。
 芭蕉と蕪村の発句鑑賞の指南書だ。
 そんじょそこらの指南書とはちっと違う。季語に内在する本意を、先行文芸ではどのように扱われているかを詳細に検証している。和歌・連歌・漢詩・謡曲・随想・小説など、異なるジャンルを縦横無尽に提示して、芭蕉と蕪村がそれらを意識下に置きながら、発句に詠み込んでいるかアプローチ。俳諧は江戸時代に確立した新興文芸であるゆえに、伝統文芸と向き合いながら独自性を打ち出した。その意味では芭蕉は和歌や連歌に匹敵するまでに深化させた。
 本書を編む発端は、大学で教鞭をとっているお二人の講義の配付資料を、PCに打ち込み、それを体系的にまとめあげたことによる。したがって、本書はいわば公開講座といっても差し支えないだろう。現役の日本文学科の学生だけでなく、社会人の方も読まれることにも配慮がなされている。原文に対してやさしい現代語訳なされているのが嬉しい。
扱われている季語は以下の通り。

春 新年・花・蛙・三月三日・行く春/暮春
夏 衣更え・五月雨・ほととぎす・若葉・短夜
秋 紅葉付鹿・月・砧・虫・秋の暮
冬 時雨・雪・枯野・冬籠り・年の暮


 これらの多くは『万葉集』や、『古今和歌集』をはじめ勅撰和歌集で、定番の季語として詠まれた。
 本書扱った季語のうち、圧巻なのはやはり「月」の部である。連歌書の『四道九品』には、月の推移に応じて、初・中・後に細分化して、月の本意が書かれてあり、興味深い。そして「月を詠んだ歌を、心理的タイプによって」例歌としてあげている。
 愚生の乏しい知識では、「月」が秋の季語と扱われるようになったのは、『金葉和歌集』に入ってからのような?気がしたが、本書を読みつつ、それらの文献を横断的に観ていくと、月に限らず、日本人の歳時記意識が芽生えく様子が窺える。そこには美意識の文学史が読み取れる。また一雪著『歌林鋸屑集』の「名月」には、数多の関連する「月」の季語が列挙されていた、記憶がある。名月に関する詞が多いということはそれだけ日本人が好んだ風物であったことの裏付けとなるだろう。
 それはともかく、芭蕉・蕪村の句の解釈について、たとえば
 若葉して御めの雫ぬぐはばや
の句について、山田あい氏の説を紹介。
 古池や蛙飛び込む水の音
 では深沢眞二氏が、かつて若き日に『雅俗』で発表した、この句の読みを『袋草紙』の説話を用いて衝撃的な論をさりげなく紹介している。従来の読みから積極的に読み替えているところに、氏の研究における芭蕉の可能性を瞠目しなくてはならない。氏は「これからも、芭蕉のことば遊びの面白さがもっと発掘されることを期待したい」とある言葉の裏側には自信が感じられる。欲を言えば、芭蕉句VS蕪村句まで踏み込んで欲しいと思うのは贅沢か。

 本書には「コラム」欄があり、一寸したコーヒブレイク。愚生のお薦めは「忘年会」である。筆者S氏の経験談だろう「自らをコントロールできる状態を保ちながら酒の味わいを楽しむのであれば、酒は暮らしに充実をもたらしてくれます」とは、酒豪家の弁にほかならず、ご自身への警笛、さらには慰めにも聞こえる。酒豪家は宿酔いの朝に「今日から酒はやめた!!」とは言わず「明日から酒はやめる!!」と言いつつ、数十年の歳月が流れている。
 本書を読んでいるいるうちに文学に酔っている気分になるのは、行間から溢れるそれを感じないわけにはゆかない。

 春夏編・秋冬編 ともに本体1800円+税
 三弥井古典文庫



芭蕉・蕪村


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