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 『ぱしゅみな』は、2000年8月に刊行された平塚宣子さんの第一歌集である。書名は、「あとがき」に著者が「デパートで何気なく手に取ったパシュミナストール、その素材のもつ風合いが私の心に触れてくるのを感じ」とあるように、平塚さんにとってよほどその語感が心地よく、印象的だったことだろう、それが由来。

  ぱしゅみなにおもへば遠くネパールの山羊の柔毛に春の風吹く

 平塚さんが短歌を作ろうと思ったきかっけは、万葉講座に出席したおり友人の誘いを受けて、1976年12月に初めて歌会に参加して以来、31文字の世界に傾倒した。したがって、この歌集の底流には、短歌を作りはじめて20年、蓄積が滔々と流れている。20年のあいだに作られた歌の中かで珠玉の歌が選び出された。多くの歌から選択するのも歌人としてのセンスの良さが解る。

  喉ぼとけの下のボタンを外しつつ「短歌はつまり」と切り出せるやつ
  かみ合はぬ雨夜の空気つんとして背なか合はせに咲くしくらめん
  紅筆にたつぷりつけし春のいろくちびるに置くまでのときめき
  いつさいのイントロなしの講演のこれぞ美意識ドナルド・キーン氏

 これらの歌は、女性の視点から描かれ、じつに洞察力の鋭い歌でありながら、どこかしら笑いが漏れてきそうである。今から15年以前の歌とは思えない斬新な発想で、じつに心地よい。
 平塚さんは若い時から心臓を悪くし、慶応病院でも3本の指に入るくらいの患者であり、それを克服したのは、本人のつよい意志と家族の協力があったからであることは、言うまでもない。なによりも、歌を作ることが良き薬だったことだろう。しかしこれらの歌には悲壮感はない。一首一首が平塚さんにとって最後の歌という気持ちで作られたのかもしれない。 

  わたくしは十歳齢を重ねたり人工弁も十歳となる
  胸と胸合はせば哀し人工弁移りて君に金属音たつ
  夢ならぬ山頂踏めば人工弁しきりに動くを撫でてやるなり
  わが感情われよりさきにキャッチして人工弁の音高まりぬ

 いつしか愚生は平塚さの歌をこう評したことがあった。「大胆かつ繊細な歌」と。平塚さんはその言葉が気に入ったようで、「わたしO型なの」と言っていたことを思い出す。

  投球の術もさまざまああ嘗て東尾投手は顔にて投げたり


 平塚さんはその後、第二歌集『 れいんぼーぶりっじ』を刊行。こちらも感性豊かな歌群が並ぶ。愚生は五月に入りさわやかな風が吹き込む書斎で『ぱしゅみな』を読んでいる。刊行から15年経った今でも新しい。名著に相応しい歌集だ。

  
平塚 宣子  現代短歌「舟の会」会員、央短歌会会員
  
 




 
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