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 東京新聞の朝刊を開くと、1枚のカラー写真が飛び込んできた。「秋の装いで産卵へ」という見出しに、「栃木県日光市の中禅寺湖に注ぐ川では、ヒメマスが体を婚姻色に変えて遡上し、秋の訪れを告げている」とする書き出し。赤に染めた数匹のヒメマスが、水草に群がっている、色鮮やかな写真が載っている。産卵期を迎えると、体色が赤くなるのは、鱒だけではない。秋になると、鮒は「紅葉鮒」と、鮎は「錆鮎」との称され、いずれも秋の季語になっている。
      一とせの鰷もさびけり鈴鹿川  鬼貫
    鮎さびて石とがりたる川瀬哉   乙州
   川音の時雨や染むる紅葉鮒   貞徳

 古くから、俳諧では「錆鮎」「紅葉鮒」を詩材として詠まれてきた。
 魚類だけではない。木々も紅葉し、ナナカマドの実が赤く色づけば、いよいよ本格的な秋の訪れである。
 赤という色は、不思議と日本人が好む色ではなかろうか。赤、紅、茜、朱、赤銅色、雀色などいろいろある。これほど「赤」に対する語彙を持つ国民は、日本以外に何処にあろうか。日本人の、色彩感覚の豊かさを感じずにはいられない。日本人に生まれて良かったと思う瞬間である。
 そういえば、諺や慣用句にも多く「赤」を含む言葉がある。『毛吹草』の「世話」に「朱に交じれば赤くなる」の諺があり、そのほか「赤の他人」や「赤目を張る」など赤を冠する言葉は、少なくないだろう。日常生活の一齣に実感することがあるだろう。小生以外にも、身に覚えのある方は多かろう。--昨夜の言い訳はじつは「真っ赤なウソ。」だけど、ばれたら青くなっちゃう。とにかくばれないことが肝心であ~る。--それはともかく、自然界の赤、日本人における赤の色彩感覚、庶民の哲学ともいえる諺などに含まれる赤は、なにかで結ばれているように思えてならない。むろん赤い糸で。
 もうすぐ酒蔵の軒には、酒林が掛けられる季節である。今年の新酒の出来は如何に。今宵も退屈をいいことに酒がすすむ。もう顔が赤くなっていることだろう。 




  
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