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 小生は四半世紀に亘り学術書を編集してきた。現在は、主夫兼編集者という肩書き(いっけん肩身の狭い立場(まぁ,いいか)。いまも古典文学関係の本づくりに勤しんでいる。
 いつ鬼籍に入るか分らぬ年齢に差し掛かった。鬼籍入る前に造ってみたいと思う本は多い。人生は有限、欲は無限と言うではないか。その中の一冊として、スポーツを学術的な切り口から捉えてみたい、というのが小生の希望。
 そんな思いで、実際に見聞きしたことを―。 
 
 高校ラグビー部の監督M氏は、無名校を一躍ラグビーの名門校へ押し上げた。全国ラグビー大会では連覇を樹立した。M監督は定年となり、母校の都内の大学の監督に就任した。学内の誌の載せられた記事を読んだ。
 高校の監督当初は、勝つために押し付けの指導方法であったと顧みる。勝つためにと思いつつ、皮肉にもなかなか勝てない。ニュージーランドへ遠征した折に、自分の指導法の間違いに気付いたそうだ。今までは見栄えだけの「盆栽」的指導であったと。ニュージーランドでは、選手の自主性と個性を伸ばす指導法である。それを取り入れたことにより、その高校は全国レベルに達し、たちまち全国制覇をした。
 先日、某大学のアメフト部のG監督のお誘いで、将来のアスリートのための栄養学の講演を聴くことができた。年少期には、筋肉の質や神経系の能力が形成されるため、どのような食事が必要か、と言ったテーマである。小生には、小学4年の愚息がいるので、とても有益な話を聞くことが出来た、と感謝している。
 その後、G監督と個人的な意見交換をし、愚息の運動能力について見ていただいた。グランドでの、コーチ曰く「脚が速い」という言葉に驚いた。というのは、愚息は昨年、重度の捻挫をして、しばらく松葉杖での歩行。それでもフラッグフットボールの関東大会にはドクターストップがかかっていたにもかかわらず、本人のつよい希望で出場した。多少の後遺症を割り引いても、愚息はさほど脚は速いとは思えなかった。また所属するチームはパスはと取れない、脚は早くない、の無いない尽くめで、練習試合すらフィールドに立てない。つまりチーム内では、見方を変えれば、劣等生としては優等生なのだ。
 だがしかし、お世話になった某大学アメフト部のコーチの詳細を聞くところ、ハンドオフ(QBからの手渡しパス)の瞬間では、すでにトップスピードに近く、減速せずに加速していく、とのこと。ぜひアメフトに挑戦を、という言葉に、愚息も自信を得たようだ。捨てる神もあれば拾う神もある、とはこのことか。
 とまれ、愚息の時期は、「いろいろな運動(正しい動き)や栄養摂取について、能力を引き出すトレーニングや食事を行うことが重要」と、G監督は熱く語る。嗚呼、正鵠を射たお言葉。
 この大学のアメフト部では、スポーツを栄養面からサポートし、さらに理に適ったトレーニングを行っている。そのような緻密な指導を、不断に積み重ねられた結果(現在大学のアメフトのオープン戦がたけなわで)、このチームは全勝している。この大学は、もちろん勝つためであるが、それより選手の将来を見込んでのトレーニングに力点を置かれている。よって目先の一勝でなく、選手の伸び代を鑑みての日々研鑽を積んでいるのだ。
 この二つの事例を見ても分るように、個性重視の指導法と栄養面・適切な運動トレーニングは、目先の試合にはむろん直接的に奏効するものではない。だが数年後の選手の伸び代においてはきっと差が出てくるだろう。
 日本のスポーツは、まだまだ発展途上にある。まさにその指導法は「盆栽教育」そのものだ。戦術重視ばかりの指導法で、個々の選手の特徴を最大限引き出し、将来のアスリート育成するのでもない。目の前の試合に勝つための鋳型に、無理やり嵌めているに過ぎない。そこからはみ出たものは排除する風潮がある。野球やサッカーの一流選手は、旧態依然の日本を脱出し、海外へ流出してしまうのは当然である。このような傾向に歯止めがかからない。先進国のスポーツ教育を受容し、年少期からのクラブチームの役割として不可欠な側面である。従って、少年らを指導する側も、戦術のみでなく、それらを学ぶ必要があろう。スポーツをグローバルな見地から見つめ直すことが求められる。ということで、どなたか、スポーツを学術的な見地から書いてくれる人はおりますか。小生にご一報を。

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